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ある朝、祖母の形見として愛用していた腕時計がつぶやいた。
「もう起きる時間じゃない? まあ、遅刻してもあたしゃ知らないけど」
目覚まし時計では起きなかった私もそうつぶやかれると目が覚めてしまう。
「今日は少し早めに出勤したら?」
時計の言葉には妙に説得力があった。天気予報を見て傘を持っていこうとする私に「持ってっちゃダメ!」と時計は鋭く叫んだ。
駅から会社までの道で雨に降られた。
「傘はいらないって言ったじゃない!」
時計に文句を言う私の背後から傘が差し掛けられた。振り返ると同僚の斎藤君だった。私達は相合傘をして会社まで歩いた。
「今日、会社終わったら一緒にメシ食わない?」
斎藤君が赤面しつつ言う。
返答に困っていると、腕時計が私の腕を持ち上げ「いいわよ!」と声を上げた。
「人生は一期一会。大切な一瞬を逃すと一生後悔するよ」
私の耳元で時計がそっとつぶやく。それは生前の祖母の口癖だった。
「もう起きる時間じゃない? まあ、遅刻してもあたしゃ知らないけど」
目覚まし時計では起きなかった私もそうつぶやかれると目が覚めてしまう。
「今日は少し早めに出勤したら?」
時計の言葉には妙に説得力があった。天気予報を見て傘を持っていこうとする私に「持ってっちゃダメ!」と時計は鋭く叫んだ。
駅から会社までの道で雨に降られた。
「傘はいらないって言ったじゃない!」
時計に文句を言う私の背後から傘が差し掛けられた。振り返ると同僚の斎藤君だった。私達は相合傘をして会社まで歩いた。
「今日、会社終わったら一緒にメシ食わない?」
斎藤君が赤面しつつ言う。
返答に困っていると、腕時計が私の腕を持ち上げ「いいわよ!」と声を上げた。
「人生は一期一会。大切な一瞬を逃すと一生後悔するよ」
私の耳元で時計がそっとつぶやく。それは生前の祖母の口癖だった。
ファンタジー
公開:20/03/14 07:00
時計のつぶやき
祖母
形見
腕時計
空想と妄想が趣味です。
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