『時計のつぶやき』

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店長が料理を運んでくる。
俺はテーブルの影で腹を時計回りに撫でた。
「おいしそ~だな~」
間延びしたような日本語で腹が鳴る。
「いただきました!岩ちゃんの腹の音。これは旨い、間違いない!」
司会のアナウンサーが煽る。
あとは料理を平らげ、「僕のお腹の言う通り!」の台詞で締めれば仕事は終わりだ。
俺が食レポタレントとして脚光を浴び始めたのは、自分の腹時計をいじれることに気づいてからだ。
そう、あの腹の音は俺が意図的に出している。世間的には腹話術ということになっているが。
たとえ味がそこそこでも俺の腹が鳴れば店は箔が付く。今じゃ俺は引く手あまただ。
テレビの取材だけでも一日平均10件は渡り歩く。
そんなに食べて体を壊さないかとよく言われるが、これも腹時計で解決している。
長針を1と2のちょうど中間にしておくのだ。短針はどこでもいい。◯時8分。これが肝だ。
そう、腹八分に医者要らずってね。
その他
公開:20/03/11 20:14
月の文学館 時計のつぶやき

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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