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ある日、私は近所の骨董屋で不思議な砂時計を見つけた。砂の一粒一粒が文字の形をしていたのだ。
「それは〈砂つぶやき時計〉だよ」
そう言うと店主の老婆が砂時計を逆さにして置く。流れ落ちる砂の音が人の声に変わり、物語をつぶやきだした。
「あるところに一人の女がいました……」
「文字の形をした砂が流れ落ちることで物語が生まれるのさ。どんな文字と組み合わさるかによって物語も変わる。欲しいかい?」
私は頷いた。
「持っておいき。ただし大切に扱わないと大変なことになるよ」
その夜、ベッド脇の机に時計を置き、物語を聴きながら心地よい眠りについた。ところが翌朝、寝ぼけていた私は机の上から砂時計を落としてしまった。ガラスが割れ、砂が床に飛び散った。途端に部屋の床や壁が砂となって崩れ、渦を巻きながら下へと落ちていく。絶叫する私自身も砂になって崩れた。つぶやきが木霊する。
「あるところに一人の女がいました……」
「それは〈砂つぶやき時計〉だよ」
そう言うと店主の老婆が砂時計を逆さにして置く。流れ落ちる砂の音が人の声に変わり、物語をつぶやきだした。
「あるところに一人の女がいました……」
「文字の形をした砂が流れ落ちることで物語が生まれるのさ。どんな文字と組み合わさるかによって物語も変わる。欲しいかい?」
私は頷いた。
「持っておいき。ただし大切に扱わないと大変なことになるよ」
その夜、ベッド脇の机に時計を置き、物語を聴きながら心地よい眠りについた。ところが翌朝、寝ぼけていた私は机の上から砂時計を落としてしまった。ガラスが割れ、砂が床に飛び散った。途端に部屋の床や壁が砂となって崩れ、渦を巻きながら下へと落ちていく。絶叫する私自身も砂になって崩れた。つぶやきが木霊する。
「あるところに一人の女がいました……」
ホラー
公開:20/03/13 07:00
時計のつぶやき
砂時計
骨董屋
空想と妄想が趣味です。
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