時の贈り物

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この宇宙の始まりと同時に光と闇の狭間で産声を上げた私は、これまで数々の美しい光景に立ち会ってきました。
光が暗黒を照らし、銀河となり、やがてあなたの暮らす惑星が青い宝石のように静かに輝く様子を私は見守ってきました。
この星に生まれた命が様々に形を変え、今のあなたに辿り着いたように、私もあなた達の作り出した私を測る道具ーー時計を渡り歩いてきました。
人は私と共に命の鼓動を刻むことを宿命づけられた存在ですが、今この瞬間にも、私からの時の贈り物が届けられ続けているのです。お気づきないかもしれませんが。
あなたが悲しいときも、苦しいときも、私はあなたを見守っています。時間という儚くも眩い花をそっとあなたの心で育み続けながら。

そんなことを、私は毎朝、あなたの机の上でアラームを鳴らしながら、少し雑にその腕に巻かれながらつぶやき続けているのです。あなたの耳に微かに響く、時を刻む針の音色にのせて。
ファンタジー
公開:20/03/11 07:00
時計のつぶやき 贈り物 人生 宇宙

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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