晴れ花と雨花

私は人生の節目を演出する冠婚葬祭用フラワーデザイナーの見習い。師匠に憧れて頼み込んで弟子にしてもらった。師匠の花は凄い。それを見る人の心の空模様を晴れにも雨にもする。結婚式の晴れ花は心を晴れやかにし、葬式の雨花は悲しみの涙を誘う。
会場設営は私の仕事。ところがオッチョコチョイな私は晴れ花と雨花を逆に設置してしまった。とにかく急いでやり直そうと結婚式場に駆け付けた。いつもはクールな師匠も車で同行してくれた。
怒られると思いきや笑顔で花嫁さんが言う。
「ずっと結婚に反対していた父が式場の花を見たら泣き出してしまって。とても良い式になりました。ありがとう」
続いて葬儀場に駆け付けると喪主の人が泣きながら言う。
「晴れやかな笑顔で母をあの世へ送ることができました。ありがとう」
私の隣に立っていた師匠が私の頭にポンと手をのせ、微かに笑うと車に乗り込む。
この仕事を一生の仕事にしたい。そう思った。