黒歴史博物館

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黒歴史博物館では『私』をテーマにした回顧展が催されていた。
館内には私の人生の節目を象徴する思い出の品々が年代順に展示されている。涎まみれのクマのぬいぐるみやペシャンコにしたランドセルまでは懐かしむことができた。その後は穴があったら入りたい黒歴史の連続だった。憧れの先輩に渡して撃沈したラブレターや中二病丸出しのポエム、果ては結婚が破談になり、泣きながら海に捨てた指輪まで、「一体どこから拾ってきたの? もうやめてえっ!」と顔を覆って叫び出したくなるほどの恥辱のオンパレード。
最後の展示は映像作品だった。題名は『走馬灯』。私の人生の節目で起きた出来事をまとめたドキュメンタリーで、スクリーンに大写しになる自分の黒歴史ダイジェストを身悶えしながら観た。ところが映像が終盤に差し掛かると私は泣いていた。恥まみれでも懸命に生きていたじゃない、私。
いつしかスクリーンの放つ光の中に私の体は溶けて消えた。
ファンタジー
公開:19/12/01 00:22
更新:19/12/01 01:18
節目 黒歴史 博物館 思い出 走馬灯

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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