流行がうまれる街

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「すごい行列……」
平日だというのに六十分待ち。今から並ぶと集合場所への移動を考えると、どう考えても間に合わない。美奈は肩を落とし、ハチ公像に向かうとすでに恵美がいた。
「美奈。どうだった?」
「空振り三振」
美奈は肩をすくめる。 唯一の収穫は、推しアイドルの等身大パネルと生サインを写真に収めたことだけ。
「こっちもよく似た感じ。あ、理絵達も帰ってきた。理絵、どうだった?」
「欲しいと思っていた物、買えなかったよ。あ、私が最後なのね。それじゃあ、集合場所に移動しようか」
もっと散策したかった。と話しながら、ハチ公像と共に写真を撮り、美奈達は駅構内へと消えていった。

未明。渋谷に憧れと落胆の欠片が渦となって現れる。ハチ公像が吠える。モヤイ像が唸る。途端、渦が逆回転し始め、線路に沿って、流行という形で美奈達の住む町へと流れ出す。
その他
公開:19/11/14 13:40

大西洋子( 滋賀 )

ショートショート、童話中心に活動しています。

ショートショートガーデン空想競技2020入賞


Twitter @yoko_egaku
note @yokomare

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