翼つきたい焼きの恩返し

その店では羽根つきたい焼きならぬ翼つきたい焼きが人気で朝から行列ができている。
私は大のたい焼き好き。せっかくの休日なのにたい焼き食べたさについ並んでしまう。30分程並んでようやく焼きたてをゲット。確かにそのお腹には大きな翼が生えている。歩きながら食べようと店を出た瞬間、袋が宙に浮き、中からたい焼きが次々と羽ばたいていった。
「おいっ、こら！」
「命を助けて頂きありがとうございます。このご恩のお返しは後ほど」
たい焼き達は口々に言うと青空に消えた。

翌朝、目を覚ますと翼を持つ全てのものがたい焼きに変わっていた。
掛けていた羽毛布団がやたら重たいと思って中を開けたら翼つきたい焼きがガサガサと滑り出て来た。
国際線のパイロットである私が職場に着くと、空港には巨大な翼つきたい焼きが離着陸を繰り返していた。
操縦室に入ると内壁は熱く甘いこし餡だった。なぜ粒餡じゃないんだと私は苛立った。