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ルーヴル美術館の至宝《サモトラケのニケ》には頭と腕がない。だが館長の私はその勝利の女神の完全な姿を知っている。それはナチスの侵攻による第二次世界大戦が勃発する10日程前のことだった。ある夜、迫り来る戦争の予感に胸を痛めた私はダリュの大階段の踊り場に展示されている女神像を見上げた。すると像が光を放ち、白銀の翼を羽ばたかせる女神となって降り立った。
「悪魔達がまもなくこの街を占領しにやってきます。ですが心配はいりません。私がついている限り、勝利の翼はあなた達にあります。私は祈ることしかできませんが、どうか耐え忍んでください」
女神は私の頬に伝う涙をそっと拭った。
私は翌日から美術品を館外に避難させることを決め、職員総出で実行に移した。
女神の予言通り、この芸術の都はナチスに占領されたものの、最終的に解放された。
戦後に再びルーヴルに帰還した勝利の女神に私は呟いた。
「お帰り。そしてありがとう」
「悪魔達がまもなくこの街を占領しにやってきます。ですが心配はいりません。私がついている限り、勝利の翼はあなた達にあります。私は祈ることしかできませんが、どうか耐え忍んでください」
女神は私の頬に伝う涙をそっと拭った。
私は翌日から美術品を館外に避難させることを決め、職員総出で実行に移した。
女神の予言通り、この芸術の都はナチスに占領されたものの、最終的に解放された。
戦後に再びルーヴルに帰還した勝利の女神に私は呟いた。
「お帰り。そしてありがとう」
ファンタジー
公開:20/01/19 07:00
更新:20/01/18 01:44
更新:20/01/18 01:44
ニケ像
ルーブル
美術館
パリ
ナチス
第二次世界大戦
空想と妄想が趣味です。
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