名探偵の奪われた翼

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名探偵ホーホームズが目を覚ましたとき、既に彼の翼は盗まれていた。
「ワトスン、僕は睡眠薬を盛られたらしい。犯人の狙いは僕の翼だった」
ペンギンである私は蝶ネクタイを触りつつ訊ねる。
「犯人の目星は?」
「無論、僕に解決できない事件はない」
鷹、鷺、鸚鵡、鴉という鳥達が部屋に集められた。
「この中に私の翼を奪った犯人がいます」
鳥達の顔が強張る。
「では順番に羽ばたいてみてください」
全ての鳥が羽ばたいた後で彼は言った。
「犯人は鸚鵡さん、あなたです」
鸚鵡は「証拠は?」と嘲る。
「梟である私の翼は闇に紛れて獲物を捕らえるために羽ばたきの音をたてません」
鸚鵡は抗議する。
「私の翼はこの通り羽ばたく度に音が出るじゃないか!」
「それは翼ではなくあなたの口から出る物真似に過ぎません。流石にお上手ですね」
鸚鵡は観念して盗んだ翼を差し出した。
また一つ、名探偵によって難事件が鮮やかに解決された。
ミステリー・推理
公開:20/01/15 07:00
更新:20/01/14 14:13
ホームズ フクロウ 探偵 推理

蟲乃森みどり( 太陽から三番目の石 )

ある朝、目が覚めると蟲乃森みどりの人生はショートショートに変わっていた。目に映る景色、耳に聞こえる音、頬に触れる風の感触、彼女をとりまく世界のすべてが物語の息吹に満ちていた。みどりは自身の肉体と精神が謎めいた物語によって形作られていることを知ってしまったのだ。

Twitterにて54字の物語はじめました
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「猫のパン屋とケムリ猫」ラジオ月の音色 第144回 月の文学館新人賞
「渋谷ワンダーランド」渋谷ショートショートコンテスト優秀賞

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