『真珠』

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母は、私を憎しみでくるみました。
胎に宿った時に気付いたのでしょう。子供が男女の双子であることに。
男女の双子は忌み子。そして、母はどうしても王の世継ぎが産みたかったのでございます。
それ故に母は、兄には愛を、私には憎しみを与え続けたのです。
胎の中でまだ人の形も成さぬころから、私は母の憎しみにくるまれ続けました。幾重にも幾重にも。
そして生まれたのが、丈夫な男児と指先ほどの真珠である私でございます。
私はその日のうちに捨てられました。
それを拾ったのが、街の乞食でございます。乞食はそれを幾何かの金に換えました。
その後、何人もの手の中を経て、私はようやく貴方様のもとに辿り着いたのでございます。
私が母を恨んではおりません。後宮の女であれば、世継ぎを願うは当然のこと。
しかし、ささやかな幸せは望みたいのです。
貴方様の指を飾ること。一個の真珠として。
お会いしとうございました。兄様。
その他
公開:19/12/29 18:45

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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