『あの時の音色』

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私の田舎はスーパーが遠く、買い物は移動販売に頼っていた。
異色だったのは、生活用品の移動販売車に加えて、駄菓子専門の移動販売があったことだ。
スーパーの店主が子供たちのために考えたそれは、私たち子どもにとって夢の国だった。
木琴の"おもちゃのチャチャチャ"を流す車。その中いっぱいに詰まったきらびやかな駄菓子たち。
母の法事のために帰省した時、数十年ぶりに懐かしいあの音を聞いた。
まだやっているんだ。私は表に飛び出した。
車の傍にいるのは店主の息子さん、いやお孫さんだろうか。よく似ているがずっと若い。
メロディを聴いて子供たちが車に駆け寄っていく。昔と同じ光景。
子供に交じって私も車を覗く。あの頃がそこにあった。
変わらない。"おもちゃのチャチャチャ"も駄菓子も、あの日の音(値)のままだ。
その他
公開:19/12/29 14:01

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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