『いいくるみ』

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さあささあさ、お立ち会い。ここに並ぶは"いいくるみ"。
北海道のエゾリスが、冬の支度に集めたもんだ。
縒れ言の葉に包まれて、憐れ春まで忘られた。
それをあっしがほじくり返し、集め集めてきたもんだ。
一つ食ったら舌先三寸、人を騙すはお手の物。
この珍しい品物が、袋ひとつで五千円。
ここで買わない手はないよ。
さあ、どうだ。
ああほら、押さない押さない。物はまだたっぷりあるから。

ふう、売れた売れた。
ただのくるみだってのに、みんなコロッと騙されちまうんだよなあ。
俺が口上前に本物の"いいくるみ"を食ってたなんて気づきもしないんだろうな。
にしてもヤクザな商売だね。
ホント言うとやりたくねえけど、弁の立つ親分に丸め込まれちまったからなあ。
あれ、そういや親分も俺に話をする前になにか食ってたような……。
その他
公開:19/12/29 13:55

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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