美しい皺

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桜子はただの興味本位で初めて同窓会に出席してみた。かつての同級生達も歳を重ね、若かりし頃の面影が残る人もいれば、その変わり様に驚く人もいた。
「あら、桜子じゃない。あなたも随分と老けたわねー」
同級生の心ない一言に桜子は傷ついた。歳の割に若いという彼女の自惚れは打ち砕かれた。
同窓会から帰宅した桜子のうかない顔を見て、夫の圭介は妻に訊ねた。
「どうかしたの?」
「老けたねって言われた。同窓会なんて行かなきゃよかった」
「僕は君の笑い皺、好きだけどな」
「気休めいわないで」
圭介は桜子を優しく抱き締めると、彼女の額の皺にそっと口づけした。
この人と結婚してよかった。圭介の温かな胸に顔を埋めながら桜子は改めてそう思った。

やがて時は流れ、桜子の葬儀の日。
白い花に囲まれた彼女の遺影は満面の笑顔だった。人生の節目をその顔に皺として刻んだ輝くばかりの美しいその表情に、参列者の誰もが笑顔になった。
その他
公開:19/12/30 10:20
節目 シワ 同窓会 葬儀

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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