日々のおせち

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お節料理とは季節の収穫を神様に感謝して捧げるお供え物が元なのだから、お正月だけじゃなくて毎日の食事も立派なお節料理なのよと母は言っていた。
父亡き後、食堂を一人で切り盛りする母は毎朝、市場に買い出しに行った。調達した季節の旬の食材を料理にして出す。メニューは日替わりのみ。母はその料理を「日々のお節」と呼んでいた。
「私達は毎日、命を頂いているの。命に生かされているのよ。はい、いただきます!」
母は「いただきます」を疎かにすることを許さない。体に摂り込む命に対する最低限の礼儀だと言っていた。思えば私の誕生日はもちろん、受験勉強で徹夜した日も、結婚、出産の祝いの日も、人生の節目にはいつも母の「お節料理」があった。
母がこの世を去った後、そのレシピと共に私は店を継いだ。まだまだ母の味には程遠いけれど日々奮闘中だ。
「いただきます!」
天国の母に届くように、今日も私は頂く命に心からの感謝を捧げる。
その他
公開:19/12/25 06:00
更新:19/12/26 00:14
節目 料理 おせち料理 食材

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。
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