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ある月の美しい夜、寺院の座敷ではお香の会が催されていた。行われていた組香は源氏香。源氏香とは任意に選ばれた五種の香の聞き当てを競う雅な遊びである。座敷には和尚の他に何人かの着物姿の男女が座り、順に香炉を回しては香を聞いていく。最後の香がたかれると、和尚をはじめとする座に居合わせた誰もが鼻をひくつかせソワソワし始めた。刹那、男女の姿が次々と猫の姿に変わり、着物を脱ぎ捨ててニャゴニャゴと畳の上を転げ回る。
和尚が悔しげに猫達を見回す。
「しまった。何者かが香包の中にマタタビを混ぜおったな!」
やがて和尚も巨大な虎の姿に変わり、喉をゴウゴウ鳴らして畳の上を転がり出した。
襖の裏に隠れていた本物の和尚が現れるとマタタビの香りにすっかり酔っ払っている虎と猫達に御札を張り付けた。途端に虎と猫達は煙と化して消えていく。
和尚は額の汗を拭うと改めて襖を見た。
そこには身構える虎と踊る猫又の墨絵があった。
和尚が悔しげに猫達を見回す。
「しまった。何者かが香包の中にマタタビを混ぜおったな!」
やがて和尚も巨大な虎の姿に変わり、喉をゴウゴウ鳴らして畳の上を転がり出した。
襖の裏に隠れていた本物の和尚が現れるとマタタビの香りにすっかり酔っ払っている虎と猫達に御札を張り付けた。途端に虎と猫達は煙と化して消えていく。
和尚は額の汗を拭うと改めて襖を見た。
そこには身構える虎と踊る猫又の墨絵があった。
ホラー
公開:19/12/18 12:28
猫と煙
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空想と妄想が趣味です。
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