『物知りの秘密』

グー、じゃらん。グー、じゃらん。
「ご隠居、居るかい？」
「ん……源さんかい。何だね、また聞きたいことでも」
「いや、今日は雨で大工仕事が休みになったんで、ご隠居んとこで茶でもご馳走になろうかと。まあ、ご隠居は町一番の物知りで話題が豊富。話をしてて楽しいってのも理由だがね」
「褒めても何も出ないよ。逆に儂の学びを妨げたのは高く付く」
「学びって。ご隠居、寝てただけじゃ」
「寝ることが儂の学びさ。今日はこのじゃらんとかいう雑誌を枕にひいて国内の観光地を学んでいた」
「へえ、そんなんで頭に入るんですか。なら専門書とか積んで寝ればいいのに」
「いや、新聞とか雑誌のような記事のあるものでなけりゃいかんのだ」
「はあ、そういうもんで」
「うむ。ただし寝てる間いびきが変になるのが玉に瑕かな」
「確かにさっきはなんか変だった」
「まあ、”いびき”に”きじ”が混ざるからこそ”いきじびき”になれるのだがね」