消えたメモ

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世界に一本のボールペンがある。
空気でも水でも、何にでも書くことができ、消すときは、暖かいタオル等で拭き、60度を超えると消える。握りに小さな突起があり、押している間だけ書けるようになっている。

これを作った発明家は、メモの方法で悩んでいたらしい。ペンはポケットに入るけれど、メモ帳やノートは持ち運ぶのが面倒。
どれを使っていたか分からなくなるし、無くしてしまうことも多い。そこで、ペンだけでメモが取れないかと考えた。

空気にメモすれば、邪魔でないし無くさない。
そんな便利なペンだけど、一本しか残っていない。製法が失われてしまったからだ。
ペンの製法を他人に持ち去られるのを恐れた発明家は、このペンで仕事部屋の空気にメモを残していたのだ。

今年の夏は、記録的な猛暑だった。
ある日、発明家は窓を閉め切って外出していた。
午後の西日は部屋の温度を上げ、60度を超えてしまったそうだ。
ファンタジー
公開:19/10/03 12:19

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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