青の探求者

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文明が滅び去って数千年。
世界から、様々なものが失われた。
国、文化、そして──いくつかの、色。

私は古代の遺跡を寝床代わりにしている。
遺跡には、本が大量に残っているからだ。原始的な情報保存技術だが、保存性は高かった。
文字は読めないところが多いけれど、書かれている図や表はなんとなく理解できる。

私が知りたいのは「青」という色のことだった。

三ヶ月ほどの滞在で、「青」は「0000FF」と表現できる、と知った。
この記号が「青」の説明なのだろう。
どんなに見つめても、その記号から「青」は想像できなかった。

休憩がてら、外に出た。
空を見上げると、雲が乱れて、途切れた所があった。
そこを見ていたら──涙が止まらなくなった。

数年後のある日、唐突に気づいた。
あのとき見えた色こそ、「青」なのだと。

だから私は、ことあるごとに空を眺めている。
もう一度、「青」を見るために──。
ファンタジー
公開:19/09/25 18:34

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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