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「あら、いらっしゃい。ひさしぶりのお客さんね」
岬の先端にある、小さな喫茶店を訪れた私を、店主らしい老婆が出迎えてくれた。
少女のような笑みを浮かべて、
「ここは、世界で唯一のお店なんですよ。さあ、こちらへどうぞ」
老婆は上を指さした。……屋根が無かった。
「見ていてごらんなさいな」
蒼穹に向けて手を伸ばした老婆が、何かをつまむような仕草をした。
続いて、からん、と乾いた音。
見れば、空を切り取ったように蒼い、小さな欠片がカップの中にあった。
湯が注がれると、蒼が溶け出し、草原と、お日さまの匂いがあたりにただよいはじめた。
「空を摘めるのは、もう私だけになっちゃったわ」
お茶を一口、含んでみた。
風が身体の中を吹き抜けたような気分。
しばらくして外に出ると、空に一カ所だけ、雲があった。
それは先ほど淹れてくれたお茶の欠片と、同じ形をしていた。
岬の先端にある、小さな喫茶店を訪れた私を、店主らしい老婆が出迎えてくれた。
少女のような笑みを浮かべて、
「ここは、世界で唯一のお店なんですよ。さあ、こちらへどうぞ」
老婆は上を指さした。……屋根が無かった。
「見ていてごらんなさいな」
蒼穹に向けて手を伸ばした老婆が、何かをつまむような仕草をした。
続いて、からん、と乾いた音。
見れば、空を切り取ったように蒼い、小さな欠片がカップの中にあった。
湯が注がれると、蒼が溶け出し、草原と、お日さまの匂いがあたりにただよいはじめた。
「空を摘めるのは、もう私だけになっちゃったわ」
お茶を一口、含んでみた。
風が身体の中を吹き抜けたような気分。
しばらくして外に出ると、空に一カ所だけ、雲があった。
それは先ほど淹れてくれたお茶の欠片と、同じ形をしていた。
ファンタジー
公開:19/08/20 13:01
#空
#喫茶店
南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。
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