言葉狩り鬼

言葉狩り鬼は人の心に棲む。
「不適切発言をしてる奴はいねえかぁ」
と人々の歪んだ正義感を煽って集団を作り、あらゆるメディアを渉猟して不謹慎、不適切な発言をしている者を抹殺する。彼らの手にする「思考停止の出刃包丁」で胸を刺し貫かれた者は心が壊れ、廃人と化してしまう。近年、インターネットの普及とともに匿名の不適切発言が横行した影響か、それを取り締まる言葉狩り鬼もまた異常発生した。そのため、メディアを通して何かを発信しようとする者は誰もが大衆の心に巣食う言葉狩り鬼に怯えながらおっかなびっくり慎重に言葉を選んで発言しなくてはならなかった。いつしか表現の自由の女神も言葉狩り鬼の集団リンチにより殺されてしまった。言葉狩り鬼の活躍によりメディアで不謹慎・不適切な発言をする者は死滅して、クリーンな世の中となった。芸術家は絵を描けなくなり、音楽家は歌を作れなくなり、芸人はつまらないことしか言えなくなった。