渋谷のあるとこ

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「うわぁ!」地下鉄を降りてから、外の景色が見え始めるとユミは声を上げた。足元には渋谷の街が広がっている。僕たちが歩いたスクランブル交差点には多くの人が小さく見えた。その向こうには109や神泉や松濤の町並みが陽を浴び、それぞれの色で輝いている。
「昭和20年代には、渋谷のビルの間にロープウェイがあったんだ。街にあるなんて面白いよね。ゴンドラからは駅前の交差点が見えたかも知れない」と僕は言った。ユミは「あ、富士山!」すっかり冠雪している。
その間にも僕らはどんどん高く登って、渋谷スカイのヘリポートが姿を現す。「ここが渋谷の頂上だったのね」見る見る遠ざかる。
僕らの乗っているロープウェイのゴンドラの向かう空は、冬の藍色から濃い群青へと変化していった。
もうすぐ令和も50年。渋谷から伸びている軌道ロープウェイのケーブルは、地球の衛星軌道上のステーションに向かう。渋谷から宇宙は、ほんの隣町になった。
SF
公開:19/11/07 06:00
更新:19/11/07 01:26

北澤奇実

前回の投稿から一年近く経っていました。びっくりしました。
そしてSSGに初投稿からそろそろ6年です。自分の変わらなさに、改めてびっくりしました。

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