〈いいね！〉ください。

実況見分に向かう車中で、私は被疑者である女に犯行動機を訊ねた。女は静かに言う。
「きっかけは些細なことでした。自分が愛用する化粧品の写真をSNSにアップしたら、いきなり100人から〈いいね！〉を貰って気持ちよくなって。それからはとにかく美味しそうな食べ物や綺麗な景色とか、人より１つでも多くの〈いいね！〉を貰うために写真や動画を撮りました」
現場に着いた我々は車を降り、女に道を案内させた。およそ犯罪には似つかわしくない風光明媚な森の中だった。
女は歩きながら語る。
「流石にネタ切れになって、もっと〈いいね！〉を貰うために友人を旅に誘いました。それがこの場所です。ここで友人を刺し殺して死体を埋め、それを動画に撮ってSNSにアップしました」
その時、不意に背後から人影が走り去った。
女が言う。
「私の父です。この見分を撮ってSNSにアップするようお願いしていたので」
私は微笑む女に驚愕した。