ダンス、ダンス、ハチ公

ある日、ハチ公像が台座から立ち上がると踊りだした。すると、その台座の下で言い争いをしていたカップルがつられて踊り始めた。その恋人達のダンスを見ていた周囲の人々も踊りだした。踊り続けるハチ公像を中心に踊りの波が人々に次々と感染していった。やがて交番の警察官も、ショップの店員までもが踊りだした。カフェの窓からスクランブル交差点で踊り続ける群衆を見下ろしていた人々も店内で踊りだした。渋谷の街にいる全ての人々に踊りが感染するのに大した時間はかからなかった。真昼の珍事としてこれを伝えるテレビのアナウンサーも踊りだした。さらにこれを誰かが動画に撮り、ネット上にアップすると、全世界の視聴者が踊りだした。この感染を食い止めようとハチ公像へ爆撃機から爆弾が投下されたが、爆弾まで踊りながら逸れ、東京湾に沈んでいった。
突如、ハチ公像が「ワン！」と一声鳴いて台座に鎮座した。祭りの後の静けさだけが残った。