満員電車を食べる巨人

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ある日、満員電車を食べる巨人が現れた。
朝と夕方、ラッシュアワーの通勤・通学客でぎゅうぎゅうに混み合った車両は巨人達にとって肉のたっぷり詰まったウインナーのごとく、何よりのご馳走だった。彼等は巨大な指先で器用に車両をつまみ上げると口の中に丸ごと放り込んでひと飲みにする。彼等を退治する術はない。自衛隊の最新鋭の軍事兵器も巨人にとっては蚊に刺された程度に過ぎないようだ。核兵器は多少有効かもしれないが、都心で使用すれば我々の方が参ってしまう。
私は恐怖よりむしろ生きることに疲れ、人生に絶望していたから、巨人に食われて死ぬのも悪くないと思っていた。遅かれ早かれ人は皆、何らかの理由で死ぬのだ。
そしてある日、ついに私の乗る車両が巨人に飲み込まれた。これで楽になれると思いきや、巨人の腹の中は寄生虫で溢れ、外の世界と何ら変わりない複雑怪奇かつ醜悪な社会が形成されていた。人間という名の寄生虫の社会が。
ホラー
公開:19/10/15 21:18
更新:19/10/17 12:46
電車 モンスター 怪物 化物 巨人 通勤 寄生

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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