節子【setuko】

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人生の節目の節々で、節子は猫に鰹節をやって私を待っていた。おかっぱの節子は頬をぷくりと膨らませ無言で猫の背を撫ぜている。
初めて自分で買う本を選ぶ時、節子は『シートン動物記』と『どんぐりと山猫』を私に差し出した。
大学を卒業する時には、虎縞のギターと縞のネクタイを。結婚する時には恋人の写真と、まだ出逢っていない何人もの女性の写真を差し出した。私は節々で一方を選択し、一方を手放してきた。
幾つかの節を経た後、節子は妻の写真と、あの虎縞のギターを差し出した。私は悩んだ末に妻の写真を選んだ。その写真の後ろには、別の小さな子供の写真が隠れていた。
選択に悔いは無い。それからも多くの節を越えて、いま臨終の私は両手で妻と子供の手を握った。

節子は仔猫と魚の入った水槽を持って、私の葬列を待っていた。魚は鰹の稚魚だった。仔猫と水槽を私に持たせると、節子は鈴を転がす様な声で言った。
「次はどっちがいい?」
ファンタジー
公開:19/10/17 00:36
更新:19/10/17 01:01

北澤奇実

慌てて書きましたが、七夕祭りに間に合いました!

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