絶望と歓喜

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遥か古のこと、天界では幸福の女神と不幸の女神が、どちらの方が地上の人間達により多くの涙を流させることができるかをめぐって言い争いをしていた。
「それほど言うなら、勝負をしましょう」
ということになり、まずは幸福の女神が人々の生きる節目ごとにとびきりの幸せをもたらした。始めは幸せのあまり泣いて喜んでいた人々もいつしか慣れっこになり、少々の幸せでは涙を流さなくなった。
続いて不幸の女神が人々の生きる節目ごとにこれでもかというほどの不幸を次々と与えた。人々は度重なる不幸に絶望の涙を流したが、やがて悲しみのあまり涙も涸れ果てた。
勝負は引き分けかと思いきや、やがて絶望に打ちひしがれた人々が立ち上がり、辛抱強く不幸を乗り越えた時、歓喜の涙を流した。
二人の女神は互いを讃えて手を握り合い、泣いた。その涙は天に虹の橋を架けた。
幸福と不幸は二つでひとつ。その交互の訪れを人は人生と呼んで慈しんだ。
ファンタジー
公開:19/10/15 20:49
更新:19/10/22 10:27
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蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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