私の物語
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「あなたの人生の節目が、その本でいう章にあたります」
その図書館員は私の手の中にある本を指さすと言った。
私は表紙を開くと目次を見て、〈結婚〉という章から読もうとした。すると、図書館員が私の手をそっと制して首を左右に振る。
「始めから読んで頂く決まりなのです」
表情は穏やかでもその口調には有無を言わせぬ力があった。
私は仕方なく自らの〈出生〉の章から本を読み始めた。途端に夢中になった。ここに来る前まで、自分の人生はなんて平凡なのかしらと嘆いていたけれど、そうではなかった。こうして本を始めから読んでいくと、それは喜怒哀楽に満ちた愛しくも切ない、世界にただ一つの『私の物語』だった。
「さて、そろそろ逝くとするかな」
私の隣に座って自らの物語を読んでいたお爺さんが本を閉じると席を立つ。すると、お爺さんの体が光の粒になって弾けて消えた。
死後の世界に持っていけるのは生前の思い出だけなのだ。
その図書館員は私の手の中にある本を指さすと言った。
私は表紙を開くと目次を見て、〈結婚〉という章から読もうとした。すると、図書館員が私の手をそっと制して首を左右に振る。
「始めから読んで頂く決まりなのです」
表情は穏やかでもその口調には有無を言わせぬ力があった。
私は仕方なく自らの〈出生〉の章から本を読み始めた。途端に夢中になった。ここに来る前まで、自分の人生はなんて平凡なのかしらと嘆いていたけれど、そうではなかった。こうして本を始めから読んでいくと、それは喜怒哀楽に満ちた愛しくも切ない、世界にただ一つの『私の物語』だった。
「さて、そろそろ逝くとするかな」
私の隣に座って自らの物語を読んでいたお爺さんが本を閉じると席を立つ。すると、お爺さんの体が光の粒になって弾けて消えた。
死後の世界に持っていけるのは生前の思い出だけなのだ。
ファンタジー
公開:19/10/10 20:37
更新:19/10/17 12:52
更新:19/10/17 12:52
節目
あの世
死後
輪廻
思い出
図書館
人生
空想と妄想が趣味です。
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