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病室のドアが開き、男が入ってきた。
「私は死神です。お迎えに上がりました」
「辛い人生だったわ。さっさとあの世へ連れて行って」
「その前に命の節目をお見せしたいのです」
死神は私を星空へと伸びる大きな木の根元に連れて行った。その半透明な幹は節によって分かれ、節の中では青い火が燃えていた。
「これは命の木です。宇宙に生命が誕生して以来、命が一つ生まれるごとに木の幹に節が一つ増えるのです」
死神が私を抱いて木の梢へと飛び、細い枝先にある節を指さした。
「そしてこれがあなたの一生を表す節。その節の中で燃えているのがあなたの命の火です」
その儚い火に手をかざすと、自分の生まれてから今までの記憶が蘇った。
「意外と楽しい人生だったかも」
死神は静かに頷いた。
その瞬間、どこかで赤ん坊の泣き声が聞こえ、命の木が大きく揺れた。そして枝先に新たな節目が刻まれた。
私は安らかに目を閉じると死神に身を委ねた。
ファンタジー
公開:19/10/10 21:34
更新:19/10/17 12:44
節目 死神 あの世 死後 人生

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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