長靴柄の猫

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「家の子になるかい? 
 お前、長靴を履いたような柄をしているね」
 おいらをこの家の子にしてくれたご主人様。そのご主人様が亡くなった。
「この家と土地は俺のものな」
「じゃあ、車とバイクはおれがもらおう」
 葬儀が終わるなり、ご主人の長男と次男はそんな話をしだした。その話には加わらず顔を伏せて座る三男。おいらは三男に近づき、溢れる涙を舌で拭いとった。
「親父を送ったばかりだというのに……」
 ご主人様の金庫から出てきた通帳や土地の権利書を見ていた上の兄が、頭を掻きむしる。
「源蔵? 誰だそれ!?」
 その方は、ご主人様がのお父様の兄にあたる方だ。縁者辿り、骨が折れるぞ?
「車もバイクも、これっぽちにしかならないのかよ!」
 電話を叩きつけるように切る二番目の兄。
 ……あてがはずれたな。
 おいらは長靴柄の猫。ただ成り行きを見守るだけ。
 


 
 
 
 
 

 
その他
公開:19/07/01 09:46
更新:19/07/01 09:54

大西洋子( 滋賀 )

ショートショート、童話中心に活動しています。

ショートショートガーデン空想競技2020入賞


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note @yokomare

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