香箱覗き

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資産家の橘君は猫好きだ。猫の香箱を眺める事が至福だったが、ガラス机の上で組まれた香箱を下から撮った写真を見て以来、執着が増した。百畳の大広間の床を強化ガラスにして、そこに百を超える猫を放ち、ガラスの下から覗いて陶然とした。
猫の数に満足した橘君は次に猫の大きさに拘った。豊満な猫を集めた後に興味は大型のネコ科動物に向いた。豹、虎、ライオンの香箱を経て最後はエジプトのスフィンクスにまで至った。さすがにスフィンクスは動かせないので、その下に向けて砂漠に穴を掘って香箱の真下に行こうとした。穴が真下に差し掛かると、驚く事に、そこには巨大な地下宮殿があった。古代の王が香箱を覗く為に建設した物だった。宮殿の天井は吹き抜けで、頭上にはスフィンクスの腹が見えた。
橘君は驚嘆の声を上げた。すると壁が崩れて砂が瀧の様に宮殿へ流れ出した。辛くも脱出した橘君の前には、全てが沈んだ砂漠が猫のトイレの様に広がっていた。
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公開:19/06/26 01:01
更新:19/07/08 00:32

北澤奇実

猫ショートショートコンテスト、優秀賞を頂戴しました。ありがとうございました。久しぶりの受賞でしたのと、紙の雑誌に掲載されるという事で喜びもひとしおです。
猫は自分では色々と書いてきたつもりなので、新しい猫のネタを考えるのに苦労しましたが、なんとなく自分らしくできたのではないかと思います。
今後とも精進してまいりますので、よろしくお願いいたします。

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