その娘の罪は

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「ふむ、まるでわからん」
その少女は生前、どんな罪も犯していなかった。閻魔帳には絶対に不備はない。
天国にも問い合わせたが、やはり地獄行きで間違いない。とうとう本人に聞いた。
「娘、地獄に堕ちる心当たりがあるか?」
「生きてる間は忙しくて。悪事をするヒマがありませんでした」
「ふむ、良いことはたくさんしている。兄弟の面倒を見て、宿屋に奉公し休みなく働き、若旦那と結婚、2人の子供を育てて、親孝行もしたが、若くして死んだな」
「間違いございません」
閻魔は弱り果てた。すると突然、娘は
閻魔に唾を吐いた。地獄の鬼が娘をとり押さえた。閻魔はあっと気づいた。
「娘、そなたはもう一度人間をやるのだ」そして娘は生まれ変わった。

地獄の鬼が閻魔に言った。
「なぜあのようなお裁きを?」
「あの娘はわしが裁けるように唾を吐いた。死んでからも人のことしか考えておらぬ。自分のためにも生きぬのは罪なのだ」
ファンタジー
公開:19/06/27 05:11
更新:19/06/27 05:18
#ファンタジー

大海原 天空( 東京 )

田丸先生のショートショートの手法のおかげで、長年溜め込んだ「小説書きたい熱」が発散できるようになりました!
ご感想・ご意見をお待ちしています、よろしくお願いします^^

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