言葉にならない言葉

『はい、遊々堂です』
「おたくの大爆笑ナマコを買った者だが」
『お買い上げありがとうございます』
「袋開けたらナマコがねえよ。ビニールに入った泥みたいなヤツしかない。何が大爆笑だ全然笑えねえぞ」
『それは生コンクリートですね』
「 ナマコならぬ生コンってかバカ野郎」
『それでは何かごさいましたら…』
「おい真っ最中だぞ終わらそうとすんな！ナマコに交換しろ！」
『承知しました。それではお客様、言葉にならない言葉をなくしてください』
その瞬間、かつて言葉にならなかった言葉が浮かんだ。
「…そりゃ、あ、愛してる、とか？」
『いえ、正解はあいうえおの“ん”でした。生コンから“ん”をなくすと？ ナマコですよね！』
「お前だけは地球が滅んでもぶっ飛ばす」
『大変失礼しました』
「今更なんだよ」
『ですがお客様…今の状況…普通に大爆笑じゃないですか？』
電話先のドヤ顔を想像して、僕は怒りで言葉を失った。