大根侍・小咄

最強の大根が欲しいって？ん、無え事はねえんだが、俺は今から家を出る所で…。まあ良いや、何かの縁だな。じゃあ俺の話を聞いていけ。いや、まずは聞けって。あったんだよ最強の大根が。でも風呂吹きにしちまった、俺が。婿養子だったから伝来の大根ってのがわかんなくてな。嫁に滅茶苦茶怒られてよ。代わりの大根を造れって。試しに庭に種植えてみたけどダメだったね。おでんの具にもならねえ。それから必死で勉強したんだよ。まずは土だね。鉄分を含んでないと。土を求めてケニアまで行ったよ。それから水。雑味の無いのに限る。五十年掛かって出来たね。抜けば玉散る青首だ。大根に包丁当てたら、包丁の方が真二つに切れちまったよ。最強の大根だぜ。ほら、あんたに預けとく。いや、俺はいいんだよ。次を見つけちまったから。造ってみたい物ができたんだ。その為の旅に出るところさ。え？何を造るって？決まってるだろ。最強の大根を下ろす、下ろし金だよ。