夏休みの通信販売

土曜の朝。
宅配便で届いたのは、見慣れた通販会社の段ボールだった。品名には「夏休み」とある。

ああ、セールで見つけたんだ。酔った勢いで注文したのを思い出した。
開けると、段ボールでできた眼鏡が入っていた。騙されたかなと思ったが、掛けてみることにした。

──唐突に、景色が変わった。
見覚えがある気がして眺めていたら、分かった。
小学生の僕の部屋だ。部屋の匂いまでが感じられるような気がした。

あの頃は──。
自転車で冒険気分で出かけて、実家に帰って野山を歩き回って。８月の半ばには、風の中に秋の匂いがまじってきて、学校が始まる予感がして。秋の運動会いやだったなあ。

できることは少なかったけど、好奇心はいっぱいあった。
大人になったらパソコンでプログラム書く仕事するんだって、隣町のパソコン屋まで自転車で通ってた。

そうだ。あの店、まだあるのかな。
遠出だけど、これから、行ってみようか。