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私の村では、花婿が花嫁に手作りの冠を贈る。冠の材料は花や蔓。そして15年毎に新しい冠を贈る。

結婚して15年、冠を作りながら私は愛人のことを考えていた。冠の出来はひどかったが、妻は喜んだ。私は後悔した。

結婚して30年、私は息子と冠を作っていた。彼は最初の冠を作っている。息子に教える事で、冠は贈る相手を考えて作るものだと気付かされた。
妻の顔には沢山のシミができたが、笑顔の美しさは変わらない。
そう、赤い実はアクセントになるよ。

結婚して45年、やっと材料を集めた。随分金を使った。貧相な造りの冠だが、妻は喜んでくれた。次の冠は作れるだろうか。

妙な女から草を渡されて私は怒った。侮辱には耐えられない。

結婚して75年、私は前回のお詫びを兼ねて素晴らしい冠を作った。シミひとつない美しい彼女にピッタリだ。

結婚して●年、妻は終わりを選んだ。かつて私が贈った、朽ち果てた冠を身につけて。
SF
公開:19/07/07 04:49
更新:19/07/21 00:28

大海原 天空( 東京 )

田丸先生のショートショートの手法のおかげで、長年溜め込んだ「小説書きたい熱」が発散できるようになりました!
ご感想・ご意見をお待ちしています、よろしくお願いします^^

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