『春の雪』

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じいちゃんが子供ん頃はなぁ、今よりも子供が沢山いだし、隣近所の付ぎ合いも深かったぁ。
子供らなんで、冬でも毎日(めぇにち)外で遊んどったぞ。
でな、じいちゃんがまだ小学校の3年に上がる前の冬だっけか。雪ちゃんて女の子がいだんだ。ああ、じいちゃんの初恋だぁ。
その子は名前の通り雪のように白くてなぁ。
でな、その子がもうじき春休みが終わるって頃にじいちゃんに言ったんだ。
「敏行ちゃん、遊んでくれてありがとうな。だけっど、おらもう限界だぁ。山さ帰らねばなんね」
分がってたんだ。じいちゃんは薄々、雪ちゃんが何者なのか
「敏行ちゃんの作った雪だるま、溶げるのがいっとう遅いの気づいたろ?あれがおらだ。おらは雪ん子だ」
じいちゃんは雪ちゃんの腕をグッと掴んだだ。
けっども、手の中に残っだのは冷たさだけだった。
雪ちゃんは居ねなっだ後だった。
春の夕日だけがじいちゃんを照らしてたんだ。
その他
公開:19/03/28 20:35

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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