新生活屋

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新生活の期限まで残り1時間しかなかった。部屋を訪れた3人の新生活屋は、それぞれ僕の入っている炬燵の正面と右と左に座った。
「では我々の考えた新生活のプランをご披露します」と最初の1人が言った。「百年寝かし続けたカレーを、1年間毎食食べていただく新生活です」
2人目が続いた。「鬼神をも泣かす琵琶法師が1年間毎晩訪れ、平家物語を語ります」
最後の1人が言った。「1年間に渡って、壁と天井に煉獄を巡るフレスコ画をお描きします」
僕は沈黙した。どれも魅力的な生活とは思えない。だが僕の心が決まらなければ新生活は訪れないのだ。時計が23時59分を指す。3人は皆脂汗を浮かべている。僕も同じだった。
時間はジリジリと過ぎる。炬燵板の合板の木目を見る。閃きが起こり僕は宣言した。「僕ら4人で1年間毎日麻雀をする!」
僕らは即座に炬燵板をひっくり返して雀牌をかき混ぜ始めた。同時に鐘が鳴り全ての旧生活が絶滅した。
その他
公開:19/03/10 14:09
更新:19/03/10 16:55

北澤奇実

慌てて書きましたが、七夕祭りに間に合いました!

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