『リサイクルショップ』

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「いってきます」
聞こえた。確かに聞こえた。お客様に品物を渡した後。元気のいい少年の声で。
私が不思議そうな顔をしていると、後ろから肩を叩かれた。店長だった。
「君にも聞こえたみたいだね」
店長が言うにはあれは品物の声なのだという。このリサイクルショップで働く者にはみんな聞こえるそうだ。
私はバイトに入って間がないからようやくと言ったところ。
「物には大事に使ってもらいたいっていう思いがある」
店長は言う。
「そのために僕は、買い取れなくて廃棄になる品物もこっそり修理して店に出してるんだ」
私は、それってチェーン店の規約に触れるんじゃ、と思ったが言わなかった。あの声を聞いたら言えるわけない。みんなもきっと。
「だからね、品物を渡した後言ってあげてほしいんだ。心の中でいいから「いってらっしゃい。いい新生活を」ってね」
私はもう行ってしまった少年の幸せな新生活を祈った。
ファンタジー
公開:19/03/11 16:27
新生活

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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