人面疽

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妻は自分の背中に出来た人面疽に、ゆゆ子と名前を付けた。男が理由を問うと平仮名の「ゆ」の字に似ているからだという。妻は人面疽を可愛がったが、それはただの蒼白い顔だった。
男は変わらず妻を愛していたが、人面疽の顔を避け、無い物のように過ごした。
人面疽が出来て数年の後に妻は病みついた。妻の顔は以前の半分程まで縮んで見えた。今際の際に「ゆゆ子を厭わないでやってくださいましね」と言い残して事切れた。
すると、妻の身体から不思議な声が聞こえた。それは高く低く歌のようであった。見ると確かに人面疽が声を上げて歌っていた。人のものでは無い澄んだ岩のような声だった。
男はその歌を聴き、悲しく腹立たしく、しかし慰められるようにも感じられどうすれば良いのか為す術が無かった。やがて日が暮れ日が昇った。
男はそのまま妻の遺言に従い、ゆゆ子は妻の命日に必ず歌をうたった。それは男が妻と過ごした年月よりずっと長く続いた。
その他
公開:19/04/11 01:05
更新:19/04/15 22:44
壬生乃サルさんのとこから

北澤奇実

慌てて書きましたが、七夕祭りに間に合いました!

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