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 ギシギシときしむ音、ガタガタと鳴り響く音。真っ暗の中、時折隙間から入り込む風から逃れるように、身体を丸くする。
「大丈夫、大丈夫。朝にはこの嵐は過ぎ去っているわ」
 暖かい温もりと、母の胸から聞こえる鼓動に、徐々に心と身体が和らいでいく。と、同時に瞼を開けるのが辛くなってくる。
「私の可愛いぼうや、ゆっくり寝なさい」
 返事を返したのかどうか、分からないまま、コトリと眠りに落ちる。

 翌朝、目が覚めると、母の言葉通り風はおさまったが、母の姿がなかった。かわりに朝御飯が用意されていた。それを食べながら、母の帰りを待った。
 ずっと、ずっと待ち続けた。だけど、母はまだ帰らない。

 背中とお腹がくっつきそうになる。頭がクラクラする。気を失う瞬間、母の声がして、力を振り絞り、外に出た。
「ああ、やっぱり子どもがいたのね!」
 母はそうだと、後ろに立つニンゲンに返事をした。
その他
公開:18/12/17 22:57

大西洋子( 滋賀 )

ショートショート、童話中心に活動しています。

ショートショートガーデン空想競技2020入賞


Twitter @yoko_egaku
note @yokomare

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