花咲く会話

3
9

 隣に越してきた坂本さん家の勇太くんと仲良くなった週末、お泊まりの許可が出た。
「いったー、へーくゆーばんかめー」
「え、な、なんて」
「あんた達、早く晩ご飯食べなさいって」
 唇を尖らせ、ゲームの一時停止をかけた勇太くんに「行こ」と促される。
 ダイニングキッチンに行くと、おじさんが笑顔で迎えてくれた。
「あちゃさんの料理はめぞ。のんのりけ」
「母さんの料理はおいしいぞ。沢山食べなさい」
 僕の頭上のハテナマークを見かねて、勇太君が訳してくれる。
 美人のおばさんは沖縄出身、色白のおじさんは津軽生まれだ。
「わらびんちゃーのメーでやんさ」
「めぐせね」
 照れるおばさんからご飯茶碗を受け取ったおじさんとの会話は、「ただののろけ」と翻訳を投げられる。
「よく解るね」
 そう耳打ちをすれば、「家族だから」と少し得意そうに笑って手を合わせる。
「ほなよばれます」
 そんな勇太君は、京都育ちだ。
その他
公開:18/12/03 09:13
更新:18/12/03 09:22

矢口慧( 関西 )

幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。

プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容