『金匠』

2
7

お金に羽が生えた。猛禽類の立派なやつだ。
そのお札はずっと私の財布の中に入っていた1万円札で長くいたせいか私によく懐いていた。
試しに、拳に乗せて、道行く人物に向けて「あいつだ、行け」と仕掛けると、見事財布をかっさらってきた。
上空から目実も止まらぬ速さで財布を奪われた人はきょとんとするばかり。
私はこれに味を占めて、何度も1万円札を飛ばした。
あっという間に小金持ちになった。
しかし、飛ばしている物の本体は紙だ。空気抵抗が強く生じるのか、真ん中の檻目のあたり小さく裂けてきた。
そしてある日、1万円札は飛び立ったまま帰ってこなかった。
金の切れ目が縁の切れ目だったようだ。
その他
公開:19/02/01 05:39

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容