『引用桜』

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「この桜並木の桜はね、"引用桜"っていうの。古今東西の桜の物語が引用されてるの」
彼女は舞い落ちる花びらの一片を掌で受ける。
花びらは淡雪のように消えた。
『さらに驚くことに、私が見入っていると、桜の花びらがハラハラと舞い降り集まって人の形にまとまったんですよ、これが』
女神のような声が消えた跡から広がった。
「今のは?」
「桜の物語。きっと素敵な物語ね」
耳をすませばそこかしこで物語が聞こえる。
「私ね、試してみたいの」
彼女は手を伸ばして桜の小枝を手折った。
「何を試すの?」
「新しい物語」
彼女の口調は秘密を打ち明ける少女のようだ。
「桜の接ぎ木はクローンだから物語も継承される。けど、突然変異で新しい物語が生まれることもあるの。物書きの端くれとして挑戦しない理由はないわ」
彼女の目は輝いている。
「きっと素敵な物語が生まれるよ」
僕は微笑んだ。


――花びらは淡雪のように、消えた。
ファンタジー
公開:19/01/31 20:08
スクー 引用文献桜並木 引用元:田丸雅智作『桜』

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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