KAIGI☆2018

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部長が耳を掻いたら、それが合図だ。
課長がプロジェクターを上に向けると、それまで映っていた退屈なグラフたちがぐるぐると天井に彩りを加える。

新入社員が一斉に立ち上がり、息を合わせて始まりのビートを刻むと、その勢いでパイプ椅子が一斉に後ろに弾き飛ばされ、その大きな破壊音をアレンジすべく、中堅社員たちが持っていた資料を紙吹雪にしてあたりいちめんに撒き散らす。
スタンバイしていた係長が電気を消せば、廊下から踊りこんでくるのは本部長、専務、常務そして秘書たち。
年季の入った力強い踊りに社員たちはついて行くのがせいいっぱいだ。

部長が課長に、課長が新入社員に。肩書が舞い、職務が飛び交う。
締め切りは乱れ、優先順位は大きく波打ち、報連相が部屋中を転がりまわる。
満を持して社長が丸机の上に転がり出ると、ひときわ大きな歓声が上がった。
全社一丸となって邁進してまいります。

会議は終わらない。
その他
公開:18/10/17 22:00

松本楽志

作家の本間祐さんが提唱した500文字小説である「超短編」というムーブメントに共感し、15年以上に渡り「超短編」を意識して短いお話を書き綴っております(ショートショートとはやや手触りが違いますが、同じくらいのサイズの小説なのでよろしくおねがいします)。なお、秋と春に文学フリマ東京に「超短編マッチ箱」で出展し、小冊子を販売しています。

そのほか「てのひら怪談」などにも参加しておりました。俳句もやってます。結社「蒼海」会員(俳号:幽樂坊)。

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