ファットシャーベット

　何時の時代も、人の興味は減量と増毛だ。
　後者に関しては、プロキシマ・ケンタウリで発見された、うねうねした寄生生物で解決したが、問題は、前者だ。
　栄養学が飛躍的に進化しても、人は食への欲求は捨てられない。
　理想的な栄養が摂取できる一日一杯のドリンクよりも、脂の滴るステーキや、口の中で蕩けるマグロ、大口で齧り付くハンバーガーを好むのだ。
　体質や環境、遺伝子の影響。脂肪の増減は個々人の資質に左右され、ダイエットコーディネーターが如何に腐心しようと、万民に平等な対処法は未だ開発されていない……と、されていたのだが。
　ある寝具メーカーが、ダイエット用のベッドを開発した。
　一晩を過して目覚めれば枕元のトレイから、朝食に真っ赤なシャーベットが出て来るカプセル型のベッドだ。
　甘いが何処か錆の匂いのする、鉄分豊富なシャーベットの重さだけ、体重が減ってる気がすると、今のところの評価は星5つだ。