人か桃か

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 高名な占い師が、とある農園に奇跡が実ると占を下した。
 古く中国より伝わった木が、不老不死の効果を与える実をただ一度だけつけるのだと言う。
 その占に大枚を叩いた富豪や権力者、有力者で、当の桃農家はごった返している……ただの庶民である自分が何故そのことを知っているかと言えば、その農園の跡取りだからだ。
 占い師に踊らされ、血眼になった金持ち本人、雇われた人間が桃の実を探し回っている。なんでも、熟した瞬間に枝からもがないと効果が消えるそうで、これぞと思った実のなる木を、それぞれに死守している……この騒ぎの元となった件の占い師は、自分の姉だ。
 だが、廃業寸前の生家を守る為でもやりすぎだ。桃園で一番古い株、今年は花を付けず、葉も落ちた木の根元に腰掛け、嘆息する。
 自分たちが桃から生まれたと知れたら、どうするつもりなんだろう……ね、母さんと親愛の意を込めて、枯れたフリで眠る母の足下に触れた。
ファンタジー
公開:18/09/17 17:00

矢口慧( 関西 )

幻想、怪談、時代物。その他諸々、わりと節操なしに書き散らす(自称)小説屋、やぐち・さとりです。

プチコン花に「花水」が選出。
プチコン海に「真珠」が選出。
プチコン七夕に「烏合の橋」が選出。
名作絵画SSコンテストに「カウンセラー」が文春編集部賞選出。
働きたい会社 ショートショートコンテストに「オフィスカフェ」が選出。
ショートショートは400文字きっちり縛り。

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