『女衒』

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女衒なんてぇのは、家族を壊す商売だ。
嬶に逃げられ、酒浸りの親父一人娘一人。その娘を酒代欲しさに売りに出す。大体カネを懐にしたところで、明日から誰が酒を買いに行くってぇ言うんだい。
娘の方もあの親父と一緒の家と、苦界とでどっちが幸せだかわからねぇ。まあ、俺にはどっちでも知ったこっちゃねぇが。
だけど、これが業ってやつなのかねぇ。仏様ってのは無慈悲だ。こんな俺に家族を授けやがった。身籠らせた女なんて捨てちまえば良かったのに、捨てられなかった。
産まれた娘にしたってそうだ。
その頃からだな、商売がうまくいかなくなったのは。家族を守るために他所様の家族を壊す。酔って忘れでもしなきゃぁ仕事にならなくなった。今じゃすっかり酔いっぱなしだ。
嬶は俺を捨てて出ていった。
酒浸りの親父一人娘一人。もうすぐ女衒がやって来る。昔馴染みさ、匂いで判らぁ。
その他
公開:18/10/31 16:24

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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