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 いっぽんの杉の木。その下に1人の男がいる。この男、いつもいる。男を知る人は皆「杉下さん」と呼んでいた。
 杉下さんは竹籠を小脇に抱えていた。そこに入っている何かを宙に撒いていた。これもいつものことだった。
 ある時、スギ花粉の飛散率が警報級になった。花粉症の人はこれを杉下さんのせいだとした。
「おい杉下!おまえがいつも撒いているそれ、それはいったいなんだっ?まさか、花粉じゃないだろうな?」
 とある花粉症の男が、杉下さんを問い詰めた。杉下さんは顔を上げた。男の怒りの理由がわからなかった。杉下さんは耳が不自由だった。まったく聞こえない。だからとりあえず笑った。「にへっ」と笑った。手を差し出した。杉下さんは思った。
(友達。やっと出来た、友達)
 気味悪がった男が逃げても、杉下さんは手を宙でぶらぶらさせていた。
 いつまでも、ぶらぶらさせていた。
公開:26/03/19 23:14

さがやま なつき( 鹿児島 )

2021年7月初投稿。お話の主人公は男性(もしくは少年)が多め。女性はキャラ作りが苦手です。(口調が書けない)

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