叙述トックリ

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美術館に入ると、暖かい空気と微かなカビの臭いに包まれた。

受付で警察手帳を見せ、入館する。
現場に向かう途中、窓際に飾られた、小さな一輪挿しが目に入った。
花瓶ではなくトックリとは珍しい。
アートなんだろうか。まあ、どうでもいい。
それよりも仕事だ。

展示室は、ものものしい雰囲気に包まれていた。
部屋は封鎖され、警官たちが指紋採取をしている。
同僚を見つけ、声をかけた。

国宝の花瓶が盗まれたと連絡があったのが今朝7時。
警備員が見つけたそうだ。
開館前で客はおらず、警報が鳴ってから、外に出た者はいないという。
まだ館内にいる可能性が高いな、と思った。

状況を把握したところで、俺はトイレに向かった。
係員が一輪挿しを手に、警備室へ向かうのとすれ違う。
水を変えるのだろう。

まあ、どうでもいい。
そういえば、盗まれた花瓶の形を聞いていなかった。
戻ってから確認するか。
ファンタジー
公開:26/02/22 12:18

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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